石村雅弘
なぜ留学先に中国を選んだのか。私が中国を選んだ理由は二つあります。
近年起きた反日デモや領海侵犯などから中国に対してポジティブなイメージを持てない方が多いと思います。私もその一人でした。過去に参加してきた勉強会でも中国と日本は分かり合うことができない、中国は危ない国であるという意見が多くあった。留学を決めた理由として過去の歴史認識などに象徴される各種問題が日中間で起きているが、そのことについて中国の学生がどのような考えを持っているのか、また日本人への感情はどのようなものであるのかと言うことを知りたいという気持ちがあったことが一つです。
もう一つは自分がインターンをしていた昨年の夏に神谷宗幣議員の台湾視察に同行させて頂いたことです。台湾の商工会議所の方や李登輝前総統のお話を聞かせて頂ただいて台湾の方々が日本に対して友好的な考えを持っていることを知りました。そして、台湾が日本にとってどれだけ重要なポジションにあるのかと言ったことや、これからの日本がどうあるべきなのかを学びました。台湾での研修の中で何度も登場したのが日本・台湾・中国との3カ国の関係であり、将来の日中関係において台湾が日本にとってよきパートナーになることができるというものでした。この研修では台湾について多くのことを学ぶことができました。しかし、台湾の方々と私たちが見ていた中国が大きく異なることが分かり、実際の中国はどうなのか。実際の中国を見てみたいという好奇心から私は中国への留学を決めました。
留学した北京市は上海に次ぐ大都市で、上海を経済の都市とすると、北京は政治・文化の都市と言うことができる。秋田県と同じ緯度にあり、面積は四国とほぼ同じ大きさで人口は1900万人。地方出身の人が多くを占めていて人口が多いため競争が非常に激しい。
私が中国に対して持っている率直な感想はとにかく大きな国であるということ、日本では珍しい均質なビル群が建ち並ぶ風景や人の数さらに街を走る車の数もが日本と比べものにならないくらい多いということが印象的でした。規模が大きいためちょっと移動しただけで町並みが大きく変わることもあり眺めていて非常におもしろかった。
天安門広場は毛沢東の像が掲げられている施設であり、民主化弾圧事件の場所として有名です。広場の周りには武装した軍人が多く集まっており少々緊張感があった。観光客で多いのは中国人の他は、日本人か韓国人、西洋系の人々だった。
他の観光地でも中国の旅行者が多かった。彼らは夏休みを利用して地方から北京に来ていた。元々広いはずの広場も人で埋め尽くされており非常に賑やかだった。私が一番驚いたのが天安門広場での横断幕の使用が禁止されていることで理由はデモなどの行為を禁止するためで警察車両が何度も通過し、目を光らせている様子は中国がやはり共産党体制のもとにあり、その権力が強大であることが分かりました。
後で中国の学生に聞いたのですが、7月は映画館が一斉に、共産党関係の映画を上映し他の映画が一切上映されないという状況だった。新作の上映が遅れて見られなくて残念だったが、インターネットで見たと話していた。若い年代がそれほど共産国家であることをそれほど重く考えていない事は意外でした。
話を聞く中で、中国は確かに共産党体制の国家ではありますが、その統治や情報操作にもかなり限界が来ている印象をうけました。
インターネットは検閲がかかり、中国からは閲覧出来ないホームページが多く、私は中国滞在中何度も閉塞感を感じました。禁止されたワードを入力すると接続が切断されたり、ブラックリストに載せられてアクセスすることの出来ないページがありました。こう言った国家による規制が平気で行われていますが、学生は検閲をクリアする方法を知っていて、よく禁止されたページを利用していると話していました。
「中国人民革命軍事博物館」は人民解放軍が管理をしている国立博物館です。入場は無料だったが、入場券を貰うところでは身分証の提示が求められ、入場ゲートは陸軍の兵士が管理するという異質な博物館でした。年代順に並べられた軍の装備や戦闘機、戦車から過去の戦争に関する資料、そして抗日戦争に関する展示室もありました。エントランスホールには白い毛沢東の像がそびえ建っており、物々しい印象を受けました。平日の昼間ながら多くの人が訪れていて、日本の鉄道博物館のような施設という感じでした。この博物館では実際に戦車にのる体験が出来るなど展示にとどまらずアトラクション的な要素もある施設でした。
私が抗日戦争の展示で少々可笑しかったのが中国があくまで侵略されたというスタンスを潔いほど貫いていた点です。また、自国軍が撤退したという事に対して設備が十分になかったことなど釈明がされていた点、さらに戦争で表彰された部隊や人物などの名前が書かれているなど、中国人のナショナリズムの一端を垣間見ることが出来きおもしろかった。
意外だったのが平和について展示がなされていたコーナーがあったこと。条約などを締結した際に渡された記念品などが周りに展示され、解放軍が平和に大きく貢献しているという内容でした。 私は実際の装備だけではなく総合的な展示をする点においてこの博物館は優れていると感じました。この施設を見学して日本にもこのような施設が必要なのでないかと感じました。
日本の平和に関する展示施設では多くの場合誤った解釈のされた歴史が展示されています。また、説明が冗長であったりと若い人が興味を持って見学することができる施設は限られています。実際の資料に触れることが出来たり、手軽に訪れることの出来るようにすることで若い人が関心を持って自分たちの国や歴史について学ぶことの出来る施設が必要だと思います。
私が中国に留学することができよかったと思ったことは、今年が中国共産党創建90周年というタイミングの良さが幸いし、以上のようなことも含め、街で共産党に関する様々な動きを見ることができたことです。
実際は皆さんが思ってられるような閉塞感を感じる場面は日常生活ではあまりありませんでした。
私が一ヶ月学んだ北京大学の近くにある中関村という地域があります。「中国のシリコンバレー」や「中国の秋葉原」と呼ばれ名前の通り多くのIT企業が集まっている。また、パソコン部品や携帯電話を始め多くの電子機器の売買がなされて大阪の日本橋のようなところです。
中国では量販店などをあまり見かけなかったので北京に住む多くの人がパソコンなどを買いに来て非常に活気があった。ここで驚いたのが企業のロゴを使いまるでその企業が直接運営しているような形をとっている店が多いことです。不正使用された企業から注意された店ではロゴを隠すなど対策がされていましたが、一部に限られ、多くの店では堂々と営業をしていました。カメラやパソコンなど、日本でもかなり高額な電子機器を普通に中国の一般的な人々が購入するようになってきています。
もう一つは「三里屯」という北京市内では数少ないバー・エリアと商業施設が併設されている地区です。ここでは大使館が集積する地区や公園が近くにあり、多くの西洋人が集まってまさに「華やか」と言える地区で、中心街には噴水と煌々と輝くエキシビジョンがあり、その周りには高級ブランド店が並んでいた。多くの地区では8時を過ぎると人が少なくなる傾向があるが、三里屯は夜遅くなっても人が多く集まっており、日本ではまず見ることの出来ない光景だと思いました。
少し気になったのが、付近に高級マンションが多く建てられていたが、一階部分のテナントが空いていて、テナントの募集をしているところが多くあり不動産バブルで転売目的で建てられたのかと思えるような光景が広がっていた。大きな建物でテナントを募集している場所は別の地区でも多く見られ、需要と供給のバランスがとられていないことを感じさせました。
綺麗な建物が建っていても道路が未舗装であったり、裏に貧民街が広がっているところもたびたび見かけた。中国が非常に速い勢いで発展していることは間違いないが、13億もの人々がすべて裕福になれる訳ではない。北京市でそのような地区が点在していることが中国の現実の厳しさをも表していると言える。勢いがある中国ですが、今後発展から取り残された人々の事が大きな社会問題になると思った。私は中国の経済について見てきましたが、今の日本には今後中国を含むアジアで成長するための大きな可能性があると思います。
今回私が、中国で感じたのは日本の文化や製品などが受け入れられる余地がまだまだあるということです。
意外だったのが、北京では日本製品をあまり見かけなかったことです。おそらく、日本製品は中国においてはかなり高価な部類に入るらしく、一部のホテルや空港でしか見かけませんでした。また町中でも走っている車は韓国車やドイツ車などでした。私は日本製品を買いやすくするために、機能を減らすなどして廉価版などとして売り込むことが出来れば中国では受け入れられると思いました。実際カメラなどは中国製が多かったが、価格をある程度抑えるなど工夫をしないと中国では売れると思えません。
今の中国の若者が日本のドラマなどを見ているということをたびたび聞きました。しかし、インターネットで違法配信されているものが多く、彼らはそれを主に利用するそうです。著作権などの意識が低い中国において日本の映画などの著作権管理などを行っていくことは大切であると思います。現在韓国が世界にコンテンツの輸出を行っているが、日本のコンテンツはすでに受け入れられる土壌ができあがっていると思います。
最後に今後日本はどうするべきなのかを学生の視点から述べさせて頂きます。
私が留学を通して感じたことは3つほどありますが、一つ目はコミュニケーション能力を含む語学を学ぶことの大切さです。留学先では現地の学生との交流の時間がありました。彼らは英語が話せる上に、日本語でのコミュニケーションもある程度とれるレベルでした。日本語を学んでいる学生に話を聞くと授業で日本人の講師に教えてもらうことは少ないが、授業内で通訳の授業があるそうで、話すということだけでなく、将来を考えた明確な目標が設定されたプログラムを受けていることが分かりました。また彼らの語学へのモチベーションは高く、日本のドラマなどを見て日本語を覚えた学生も居ました。中国の若者の中では日本の文化などが広く受け入れられており、日本の俳優・女優の名前も多く知られているようでした。ただ語学を学ぶのでなく、文化もあわせて学習することがどれだけ大切なのかが分かりました。
印象に残っているのが街の中で英会話スクールが増えている。さらに書店などでは英語の学習コーナーが大きな割合を占めていました。中国では基本的に英語がほとんど通じなかったのですが、話せる人は上手いという印象を受けました。語学を取得しようとするモチベーションの高さをみただけではなく、自分を含め周りの学生が英語も満足に話すことが出来ないなかで、3カ国語を話すことが出来る同年代がいるということが自分も何か出来ないといけないという危機感を感じました。
二つ目は日本人は自分の国の記念日や歴史などについて知らない人が多い。現地で案内をしてくれた学生スタッフと話していると、記念日などの話題では何月何日など細かいところまで答えたり、疑問に思ったことについて尋ねると詳しく答えた。研修の中で日本の文化について問われたが、日本人の学生は電子辞書で調べながら伝えるのが精一杯で、かなり恥ずかしい思いをした。また自分たちの過去の歴史について誤解している学生も多く、国史を学ぶことを含め自分たちの文化・社会についてもきちんと学び直すことが必要だと思った。
三つめは留学することも含め、様々な事にチャレンジし積極性を持って行動することが大切、本などを読むことである程度物事を知ることができますが、「百聞は一見にしかず」という言葉があるように体験してみないと分からないこともたくさんあります。至極当たり前のことですが留学を通して学んだ重要なことの一つです。
中国に滞在したのは一ヶ月程度でしたが、私は中国と日本を考えたときに日本はこのままいけないということを痛切に感じました。中国が非常に考えられたビジョンをもち、それにあった政策を作っている点などは日本も見習うべきです。菅内閣から野田内閣に変わったことを3日遅れで知った。中国で週刊誌の記事がたった2ページと扱いは小さいものでした。それだけ日本のウェイトが下がってきているということに危機感を覚えました。それだけではなく、サポートをしてくれた学生から「日本の歴代の首相はほとんど皆中国に来たのに菅首相は中国に来ていない」といわれたことには驚いた。また、私たちと中国の学生に政治的な意識の差がかなりあることに気づかされたことがショックでした。
日本が今一番必要なのは国家ビジョンだと思います。今後どのような国にしていきたいのかということを決めることなしに他国と渡り合うことはできません。中国は勢いがあり、今後さらに成長する国家であると思いました。そんな中国と渡り合っていくためにも今、大きなシステムの転換が求められています。